2009年12月30日水曜日

スシローと業界内イノベーション

今日から年末年始休暇ということで、宇都宮へ帰省した。

夕食に何を食べようかという話になったとき、
妻が、私が寿司を食べたがっていたのを覚えてくれていた。

私は寿司が大好きだ。妻はあまり得意ではない。
そのため、寿司を食べるのは、せいぜい居酒屋へ行ったときくらいなのだ。

そんなに寿司が好きなら、回転寿司なり、「回らない」寿司屋なりに行けばよいではないか、
と突っ込みをいただくかもしれないが、自分から進んでそれらの店に行くことはまずない。

「回らない」寿司屋は単純に費用の問題。
そして、回転寿司の場合は、安さにかまけて食べ過ぎてしまい、結局高くついてしまうためだ。

話しを戻す。

小学校が冬休みに入り、私たちよりも先立って宇都宮へ来ていた姪2人が、
妻の発言をきっかけに、「スシローへ行きたい」と言い出した。

スシローへ行ったことがなかった私。
1皿105円の安い回転寿司チェーンというイメージしか持っていなかった私は、
正直なところ味には期待していなかった。

実際に店舗へ行ってみると、味は良くないどころか美味しかった。
そして、それ以上に、1皿105円を実現しつつ顧客満足度を高めるための「仕組み」に大変驚かされた。

以下の内容は、個人的には非常に勉強になったことだったため、
すでにスシローへ行ったことがある人にはつまらない内容になるかもしれないがご容赦いただきたい。

ポイント1.シャリが適度な大きさである(っていうか小さい)
 お世辞にも大きいとはいえないシャリ。低価格の回転すしチェーンというと、小さなネタに大きなシャリというイメージがあるが、スシローはシャリが決して大きくない。そのため、男性であれば、1皿105円というお値打ち感も手伝って何皿も食べるだろう。女性も、色々なメニューに手を伸ばしやすい。結果として、客単価を向上させていると思われる。
 また、シャリが大きくないのにはもう1つの効果があることに気がついた。それは、寿司としての見た目の良さに貢献しているという点だ。大きなシャリに小さなネタがポンと乗っている様は、なんだか貧相だ。しかし、スシローにおいては、シャリが小さいことでネタとの大きさのバランスがよく、非常に美味しそうに見える。食事はやはり楽しく美味しく食べたいもの。そのうえで、盛り付けの上手さが美味しさ(満足感)の向上に寄与している。
 もちろん、シャリの大きさによってコストが下がるのは言うまでもない。

ポイント2.ホールに人(スタッフ)を置かなくてよい店作り
 寿司のコンベア上で流れている以外の注文は、インターホン越しに行う。板前さんも、ホールスタッフ(ウェイトレスさんって言えばいいのだろうか)もホールにいない。各テーブルには「ここは○○色のお席です」と書かれた小さなプレートがある。最初は何のことかと思ったが、注文した寿司は、他の寿司と一緒にコンベアに乗って流れてくる。その皿に、「これは、○○色のお客様の注文品です」というような内容が書いてあり、自分が注文したものが一目瞭然なのだ。この仕組みにより、店舗で働くスタッフの人数を最小限にすることが出来る。
 この仕組みには本当に感心した。
 飲食店の原価率は30%程度というのはよく知られたことであるが、同様に人件費率(売上高対)も30%程度を占めている。年商2880万円(日販20万円)のお店なら、年間人件費は約864万円だ。外食産業においては、正社員、パートタイマー・アルバイトを問わず、人材が定着しないという悩みを抱えている企業が多い。そのため、給与として支払う直接人件費以外にも、求人広告費用や、人材教育費用もかなりの額にのぼる。
 しかし、システム・機械は決して辞めない。この店舗内注文システムを作るには初期投資はかかるだろうけれども、その後(給与・教育等)を考えると、早々にペイしてしまうだろう。

ポイント3.顧客満足を下げない「1度に3つまで」の注文システム
 ポイント2とかぶる内容になるが、このインターホン越しの注文システムにおいて、1つのルールがある。1テーブルにつき1度に3つまでしか注文できない。飲食店において、いつまでたっても注文したものが提供されないと、不満が高まる。しかし、このルールにより、どのテーブルでもさほど待たずに、寿司が流れてくる。1度に大量に注文をしたいお客さんは当初不満を抱くかもしれないが、仮にずらりとテーブル上に寿司の皿が並べられても、食べきるまでには時間がかかり、この注文システムの合理性に気付くだろう。

ポイント4.素早い精算システム
 1皿105円とは言っても、お皿の色が2種類ある。当初は意味がわからなかったが、さびぬきとわさび入りを区別するものであった。この仕組みにより、顧客はどの皿がさびぬきか一目瞭然になる仕組みが用意されている。と同時に、1皿105円にすることにより、会計時の精算が早い。数少ないホールスタッフで店舗を切り盛りするためには、1つ1つのオペレーションに時間がかかってはいけない。そこで1皿105円と決まっていれば、皿数を数える時間は短くて済む。(従業員教育にかかる時間も少ない)

ポイント5.ゆったりできる空間作り
 一昔前にあったような、コンベアの間に板前さんが立っているレイアウトになっていない。コンベアが間仕切りを兼ねているような作りになっているため、空間効率が非常に良く、1つ1つのテーブルが大きい。ゆったりと食事を楽しむことができる。

他にも書きたいことが山ほどあったが、非常に長くなってしまったので、そろそろ閉める。
過当競争状態を勝ち抜くためには、コスト削減や同業界の優良他店をベンチマークするありきたりの合理化だけでは対応できない。

そこで、他業種の仕組みなどを取り入れるなどの「業界内イノベーション」が必要になる。
スシローにはその一端を垣間見た気がした。(私の回転寿司業界に対する理解不足で、他の店舗がどうかは知りません。ごめんなさい)

苦境が続くファミリーレストラン業態。
カラオケ店や一部の居酒屋にヒントを得たような、このウェイトレスさんが注文を取りに来ないシステムは、導入してもよいのではないかと思った。

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