2010年1月21日木曜日

「新入社員 半年間の意識変化調査」結果を見て感じた価値観の変化

毎年12月に日本生産性本部が発表している新入社員 半年間の意識変化調査PDF 152KB)。

日本生産性本部が昨年12月に発表しているにもかかわらず、
asahi.comが何故今更とりあげたのかはわからないが、それはそれとして。
asahi.comのリンク先が消えてしまうといけないので、全文コピペさせていただく。

「食べていける収入あれば十分」過去最高 新入社員調査

昨春の新入社員のうち、「食べていけるだけの収入があれば十分だ」と考える割合が半数近くに上り、過去最高となったことが、日本生産性本部の調査で分かった。年功序列的な賃金体系を望む割合も最高を記録。景気回復に力強さがない中で、生活の安定を望む姿が浮かび上がった。

 生産性本部は1991年から、新卒で4月に入社した新人に対し春と秋に調査をして意識変化を調べている。今回は昨年10~11月、全国で376人から回答を得た。

 「人より多くの賃金を得なくても食べていけるだけの収入があれば十分だ」との問いに「そう思う」と答えたのは47.1%。「そう思わない」と答えた割合(52.9%)よりは低いものの、2006年にこの問いを始めて以来、春秋を通じて最高となった。春の調査(36.2%)との差が10ポイント以上開き、上昇幅も最大だった。

 また、「年齢・経験を重視して給与が上がるシステム」を希望するとの回答が48.1%で、91年の調査開始以来、春秋を通じて最高だった。景気は緩やかに持ち直しているとされるが、回復力は弱く、新入社員も厳しさを肌で実感しているようだ。
前置きとして、アンケート結果の分析は、何が正解、何が不正解というものはないに等しい。
で、asahi.comの分析と、私の分析は異なるのでちょっとコメントさせていただく。

asahi.com(朝日新聞社)は、日本生産性本部が発表した調査結果のサマリーに基づき、
生活の安定を望む姿が浮かび上がった。
というコメントを付記した。生活の安定を望む方法は多種多様であるが、少なくともこの記事からは、不景気の中で、会社に忠誠を誓う保守的な新入社員が増えたような印象を受ける。

ところが、調査結果をよくよく見ると、以下のような点にも着目できる。
・(f)キャリアについて、「ひとつの仕事や持ち場を長い間経験させて、スペシャリスト(専門家)として鍛える職場」を志向する新入社員の割合は2002年秋から減少する一方で、「いろいろな仕事や持ち場を経験させて、ジェネラリスト(会社全般の仕事が見渡せるような人)としてきたえる職場」は増加傾向にある。(PDFの9ページより)
・(h)自分には仕事を通じてかなえたい夢があるに対し、「そう思う」回答者の割合は、2002年からほぼ横ばいである。(PDF11ページ)
・(i)将来への自分のキャリアプランを考える上では、社内で出世するより、自分で独立して起業したいは、「そう思う」が低下傾向にある。(PDF11ページ)

上記の傾向を踏まえると、「人より多く賃金を得なくとも、食べていけるだけの収入があれば十分だ」が増加しているのは、保守的なのではなく、やりたいことは入社した会社でかなえたい、というちゃっかり型へと意識がシフトしているのではないかと考えられる。だから、起業してリスクを負いたくないのではなく、そもそも単に入社した会社で夢をかなえたい。色んな経験を積ませてもらえるのであることを至上とし、その経験を積ませてもらえるのであれば、"食べていけるだけの収入があれば十分だ”という、求道者のような価値観にシフトしているのではないだろうか。

旧来の価値観では、求道者=職人肌=スペシャリストというイメージがあるが、イチロー選手やかつてのサッカーの中田英寿氏のように、何でもできる(つまり、ジェネラリスト)のが求道者であるという価値観へとシフトしていると、私は読み取った。異論反論大歓迎。

それにしても、この調査結果で恐ろしさを感じたのは、
(l)従来の基準や慣習には反しても、法律に反しないことであれば、どんな強引な手段や手法をとっても問題ないに対し「そう思う」の割合が、年々増加傾向にあることだ。(PDF11ページ)

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